山形の設計事務所「廣設計室」

  〜中村廣のちょっとお役立ちコラム〜
 
エコロジーと住宅 35.私が考えるエコロジーとは(5)
 
『昔の家』と『今の家』のつくり方の根本的な違いは?
 
A.『今の家』はどんな材料でつくられているのでしょうか。
今の家は「商品」としての性格がとても強くなってきています。昔の家は太い柱・梁を表す真壁造りが多い日本古来の伝統的な工法でした。今の家の多くは柱・梁を隠す大壁造りが多くなりました。柱の多くは10.5p角、材質は輸入材の集成柱を使用することが多くなりました。強度があり乾燥していて狂いが生じにくく比較的安価といえます。このような軸組が基礎の上に載っています。この骨組みに石膏ボードで覆い天井と壁が造られ、その上にビニールクロスが貼られます。そして、天井や壁の中には断熱材や設備配管が通っています。床は合板で塞がれ、その上にフローリングなどの仕上げ材が張られます。このように床・壁・天井がボード状の材料で覆われていて、外からは建物内部の状況がわからないようになっています。
 
B.今の家は『?』だらけ
Aで書いたように今の家は『?』だらけで、現在の壁の中の状況が全くわかりません。欠陥住宅がマスコミで大きく報道されると「自分の家は大丈夫かな?」ととても不安になってしまうのはそのためなのです。なぜこうした造りになっているのかというと、その方が安くて性能のいい家になるからです。昨今、住宅の価格の多くは人件費です。そこで、時間のかかる左官壁や複雑な造体は除き、代わりにボード材(石膏ボード・合板)で床・壁・天井を造るようになったのです。まず、細い骨組を構造的に強くするため合板を張り回し、左官壁の代わりにグラスウールなどの安価な断熱材を充填し熱の出入を抑えます。さらに、壁の内側と外側を石膏ボードやサイディングといった燃えない面材で防火性能を上げます。このように全てを覆い中が見えないようにすると費用対効果の高い家が出来るのです。
 
C.費用対効果の高い家が『いい家』なのでしょうか。
費用対効果の高い家になるなら、壁や天井の内側がどのようになっているかわからなくても問題ない、と考える人もいるかもしれません。確かに、不具合が全くない家ならそれでもかまわないかもしれません。しかし、どんな名人が造った家でも不具合が全くない家はありえません。大なり小なり何か問題点を抱えているものです。問題が発生した時「?」の多い造りになっていると、不具合の発生がわかりにくくなってしまいます。その場ですぐ直せばその時で済んでしまうものも、「?」の多いつくりの家は発見が遅れ内側でどんどん進み、大変なケースになってしまう事が多く見られます。雨漏り、結露、白アリなどは「?」です。断熱性を始め高性能な住宅を求めるとどうしても「?」が多くなります。「?」が多い家はいい家とはいいにくい。しかし、現在は「?」をなくして家を建てることは不可能でしょう。建築に限らず技術が発展すると共に機能が複雑化してきます。そうすると「?」の部分がどうしても多くなります。どうしようもないことなのでしょうか・・・。建築では住宅設備機器の発展が速いのではないかと思います。そこで、贅沢な機能を控えシンプルに。と考えると「?」は少なくなります。「?」は無くすことが難しい。その上でクレームを少なくするには人間ドックのようなメンテナンスが家にも必要になってきます。天井上、壁内、床下を点検できる改め口(点検口)を設け、年1回位の点検は行うべきではないでしょうか。
 
D.手入れの手間を省こうとした『今の家』
「?」が多い造りになる理由として対費用効果を高めるため、というのは前に説明しました。この他にもう一つあります。それは手入れが楽だということです。全てが見える家は、家を構成する材料の全てが手入れの対象となりました。これは昔の家の生活を体験したことのない現在の人にとっては結構大変なことです。一方「?」が多い造り、すなわち面材で覆われた家だとその点が全く違います。まず、軸組は隠れているので手入れの対象になりません。また壁・天井を覆う石膏ボードの上には主にビニールクロスが貼られています。ビニールクロスは表面がつるつるしていて掃除が簡単です。このように「?」の多い造りにすると手入れは簡単になります。しかし、手入れが楽になるという事はメンテナンスを怠ることにつながります。また、塗壁は長年経つと独特の味が出てきますが、長年貼ったままのビニールクロスは劣化していく様はさびしさを感じるものです。
 
 
 
 
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