山形の設計事務所「廣設計室」

  〜中村廣のちょっとお役立ちコラム〜
 
エコロジーと住宅 37.私が考えるエコロジーとは(7)
 
A.わずか20〜30年で住めなくなるのが「今の家」です。
前回書いたように今の家は不具合に対応できず自然環境にも対応できていない、そのため「家」の寿命は極端に短くなってしまいました。「今の家」が長持ちしないのは他にも理由がありました。一つは結露です。昭和40年代にアルミサッシとグラスウールが普及しスカスカの寒い家は少し暖かくなりました。しかし、中途半端な断熱は「家」の寿命を短くしました。中途半端な断熱だけならまだしも、石油ストーブ(ファンヒーターも含む)を燃焼させ家中が結露だらけとなりました。現在は、断熱の先進国にならい試行錯誤しながら「高断熱・高気密」が進み、ようやく長寿命な住宅が可能になりつつあります。もう一つの問題は昔の家と違い、今の家は細かい間仕切りが多く増改築に対応できないことです。昔の家は多目的な用途に対応できるよう障子、フスマで間仕切り必要に応じて部屋の広さを調節しました。そして、骨組(軸組)は太く大きなスパンで組まれていました。今の家は細かい材料を組み、細かな空間を前提としたつくりとなりました。また、今の家は骨組と骨組が組まれた面材がセットになっていて地震に耐えられるような仕組みになっているため、動かせない壁が多くて増改築の場合結構苦労します。その結果「家」の平均寿命が20〜30年と短くなっているのではないでしょうか。昔の家は50〜100年くらい当たり前のようにもったことを考えると、いったいどうしてしまったのか?と考えてしまうでしょう。現在の解体費の高騰や所得の伸び方を考えると、使い捨ての住宅は今後建てることは不可能になっていくはずです…。
 
B.なぜ「昔の家」がなくなってしまったのでしょうか?
次に「昔の家」が「今の家」に変わる経緯をみてみましょう。1945年、日本は連合国軍に降伏し、太平洋戦争が終結しました。国土の多くは焦土と化し、住む所を失った人達で溢れました。とにかく雨露をしのげるところがすぐに必要となりました。この切迫した需要を背景に、有り合わせの材料でたくさんの家がつくられました。これらの家は、「昔の家」を極端に簡素にしたもので、細い材料を組み合わせてすぐにつくれた「家」でした。やがて戦後の復興が進むなか、経済発展のために持ち家が奨励されるようになり、1950年に住宅金融公庫が設けられました。そして、融資の基準として「家」のつくり方が決められたのです。そのつくり方は、すでに当たり前となっていた簡素な骨組の家を基準としたものでした。こうして「日本の家」はこれまでの伝統的なつくり方から切り離され、全く違う道をたどることになったのです。
 
C.「家」を大量に建てるためつくり方が変わりました。
「家」を大量に供給するためには、「昔の家」のような方法では不可能です。そこで材料と工法が一新されました。まず、細い材料を前提とした骨組となり、しっかりとした材料でなくても一応骨組を成立させる仕組みを考えたのです。もちろん工事に必要な技能は早く積まれません、継手や仕口が簡略化され金物が積極的に使われるようになりました。次に左官壁が上げられます。材料に水を混ぜ塗るという湿式工法が徐々に追放されました。これは、材料づくりや乾燥などに時間がかかり嫌がられたのが理由です。変わりに石膏ボードや合板などの面材で天井や壁を仕上る乾式工法が主流となってきました。それでも左官の仕事はなくなりませんでしたが、壁全体を仕上る仕事からボードの表面を仕上る仕事に変わっていきました。こうして細い骨組に薄い屋根と薄い壁が普通となりました。
 
D.ハウスメーカーと呼ばれる大企業が進出してきました。
このように家づくりが産業化していく中で新しい業種が誕生しました。ハウスメーカーです。ハウスメーカーという言葉からも分かるように、家づくりの商品化、すなわち「家」を工業製品とすることを目標にしてきました。全国一律の性能のものを、一律の値段でつくることを目指したのです。彼らは、まず、家のつくりの規格化を図りました。デザインごとに商品の名前を付けて、材料の寸法や組合せ、性能を決めていったのです。そして広告宣伝を大量に打ち、モデルハウスをたくさん建てました。その甲斐あってハウスメーカーはシェアを広げていきました。しかし、15%を超えることは出来ませんでした。それは、結局『工業製品化』することは出来なかったためです。やはり、家を建てる人は規格品を嫌がるのです。ハウスメーカーの商品化路線は絵に描いた餅となり、単なる現場生産品の元請企業と化してしまったのです。
 
 
 
 
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